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いろんな人に理解してもらうより、好きなことをしてファンに喜ばれたい


2021年12月、鹿児島県阿久根市にある「イワシビル」を訪問し、イワシビルを運営する下園薩男商店の三代目社長、下園正博さんにイワシビルをつくった経緯や、ここからつくりたい未来についてお話しを伺いました。





丸干しを食べる人が減っていくなか

事業をどうしようかと考えたのがスタート



鹿児島県阿久根市は人口2万人の港町、海沿いの道を走っていると突然オシャレな建物が現れます。1Fはショップ&カフェ、2Fは丸干しのオイル漬けなどの工場、3Fはホステル(簡易宿泊施設)という珍しい形態の「イワシビル」です。


イワシビルを運営するのは昭和14年(1939年)創業の下園薩男商店で、高品質のウルメイワシの丸干しを業務用に取り扱う会社です。売上の6割は関東圏が占め、全国や海外にも販路を持つ老舗企業です。


三代目社長の下園正博さんは「現在ウルメイワシの丸干し事業は全国シェアで1位ですが、そもそも丸干しを食べる人が年々減っていくなかで、このまま事業を拡大することに限界を感じていました」と冷静に市場を分析しています。




地域の伝統や文化に一手間加え

自分達も楽しみながら新しい見せ方を



「今あるコトに一手間加えそれを誇り楽しみ人生を豊かにする」という企業理念のもと、下園さんは今までは業務用で販売していた高品質の丸干しを、丸干しを食べていない消費者に届けることから新たなチャレンジをはじめます。


「はらぺこイワシ」は、朝4時~6時に獲れるウルメイワシのみを使用した個別包装の商品です。イワシのお腹の中にエサが無いなので苦みが少なく、丸干しを食べたことがない子どもにも人気の商品です。また、丸干しをオイル漬けにした「旅する丸干し」シリーズは全国のセレクトショップにも並ぶ人気商品へと成長させました。


どの商品も丸干しの食べ方を提案し、すぐに食べられる状態で提供することで、丸干しを食べたことがない方にも買いやすいように考えられています。また思わず手に取りたくなる商品やグッズのデザインは、地元のデザイナーを積極的に起用しています。





事業に対して人を募集するのではなく

やりたいことがある人の事業化を応援する



そんなアイディアと行動力に溢れる下園さんは、父である二代目社長から「何かやれ」と築50年のビル1棟を託されます。突然手に入った3階建てのビルをどう使おうか?と考えて、2017年9月に生まれたのがイワシビルです。


「阿久根市には全国から地域おこし協力隊が来ていますが、任期の三年間で仕事をつくらないと残れない地域の現状がありました。まずはおこし協力隊が阿久根で働き続けられる場所、雇用の受け皿としてイワシビルをスタートさせました。」


地域の働き手が不足していくなかで「干物屋だと若い人は集まらないけど、イワシビルなら集まると思った」という下園さんの読みと、若手スタッフの商品開発を積極的にサポートする仕組みが合わさり、ここからヒット商品が続々と誕生していきます。



写真:ランチにいただいた阿久根の海の幸をぎゅっと詰め込んだ海鮮丼。下園さんの周りには素敵な仲間があつまり、この日も全国から視察や観光客が訪れていました。



 

下園さんは企業秘密とも思える商品開発のノウハウをnoteで公開されたり、地元の経営者と一緒に街の観光連盟を兼ねた会社「まちの灯台 阿久根」を立ち上げたり、ご自身の会社の事業にとどまらず、イワシビルを起点に街そのものを仲間と楽しみながらつくろうとしているように感じました。


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