2021年12月、鹿児島市にある「そらのまちほいくえん」に行ってきました。
惣菜店が併設されている保育園、レシピ本も出版している保育園、グッドデザイン賞を受賞している保育園...これを聞いただけでもワクワクの訪問記をダイジェストで紹介します。
鹿児島最大の繁華街「天文館」の商店街を進んだところに、おいしそうな惣菜店を併設した「そらのまちほいくえん」はあります。地元で有名な本屋さんが入居していた3階建てのビル1棟をリノベーションして、2018年にオープンしました。
どうして商店街のなかに保育園をつくったのでしょうか?どうして保育園が惣菜店を併設しているのでしょうか?今回は代表の古川さんと副園長の柳本さんに、保育園をつくった経緯や教育と未来についてのお話しを伺いました。
主体的に生きる力を身につけるために
多様な大人と関われる場をつくりたかった
もともと教育とは別の業界で仕事をしてきた古川さんが保育園をつくろうと思ったのは、「いまの子どもたちの教育環境は同質性が高すぎると思った」から。大量生産・大量消費の時代にはそのような教育は有効だったものの、いまの社会でもその型が続いているとで、自分の存在価値が分かりにくくなる子どもが増えていることへの危機感からでした。
多様な大人が子どもたちの教育に関われる社会をつくるにはどうしたらいいか?その答えが商店街の中に保育園をつくることでした。「商店街にはさまざまな商売や生業があり、子どもたちの登園時には開店準備をしている店主の姿や、ゴミ回収などの街がまわる仕組みを目にする機会が自然と多くなります。」
市役所を経由しない企業主導型保育園
惣菜店が街との接点に
そらのまち保育園は企業主導型の保育園のため、入園する子どもたちは市役所の手続きを経由せずに入園します。「保育園を開いた商店街は個人商店が多く、忙しい店主のみなさんにも使ってもらえて、入園を検討している保護者さんにはふらっと園の雰囲気を感じてもらえるようにと、惣菜店を併設しました。」
また保育園と惣菜店があることで、毎日、数百食分の食材を仕入れて加工しています。「地元の生産者さんを守りながら持続可能な地域社会をつくっていくために、私たちは相見積もりはせずに信頼できる生産者さんから適正な価格で仕入れを続けています。」

まちの変化は予想していたけど
二年で変化が生まれるとは思っていなかった
保育園が商店街の中にできたことで、街にも変化が生まれています。「保育園には毎日子どもと保護者が朝と夕方に通うため、商店街を通る人が必然的に多くなり、いままで空いていた店舗も埋まっていき活気が出てきました。」
この場所に保育園をつくると決めた古川さんに「どれぐらい街が変化すると予測していましたか?」と聞いてみたら、「こうなることはつくる前から想像していました。だけどまさか二年で変化が生まれる思っていなかった」とのこと。
いつもパワフルでにこやか、そしてしっかりと考えて仕掛けをつくっている古川さんの重力に巻き込まれるように、保育園の中と外に仲間がどんどん増えていっているようでした。そして何より、関わっている大人のみなさんが、何より楽しそうなのが印象的でした。
異分野から参入した古川さんは従来の保育業界の常識や慣習に捉われることなく、子どもたちが主体的に生きる力を身につけられるような仕掛けを次々と考えて実践していました。保育園を起点に持続可能な地域モデルをつくるという発想力と行動力、そして食の持つパワーをうまく使った事業展開、勉強になることだらけであっという間の時間でした。